「もっとも日常的な映像体験は何だろうか?」と自問したときに真っ先に頭に浮かぶものは、映画でもテレビでも美術館で鑑賞する映像作品でもなく、ソーシャルメディアで延々と流れ続けるショート動画だった。遠く離れた国の戦争、災禍、事故、陰謀論、ホームビデオ、当世風カルチャーがスワイプするごとに現れる。これらは画面の向こう側へのリアリティを消し、他者を単なる刺激、あるいはコンテンツとして消費させる壮大なスペクタクル(見せ物)だ。 本作では、インターネットで収集したショート動画に自らのアバターを投影させることで、映像作品へと転換を試みた。現代にもっとも流通する映像をフッテージにし、ドキュメンタリー/フィクション、高尚さ/チープさ、美術/非美術といった二元論を脱構築することで、今日的な映像体験が他者への共感を喚起し、社会的課題を提示しうるものかを鑑賞者へ問いかけたい。形式:シングルチャンネルビデオ素材:X, Instagram, Tiktok